7月13日父たちの死順当にいけば親は子よりも早く死ぬ。親の手で育てられた子にとって、その死は大きな出来事だ。だから、主人公の生涯を追った小説では、両親(や祖父母)の死は重要なイベントとして描かれる。 私の両親は、高齢者、と呼ばれる年齢に数年前に達した。二月には父が肺炎をこじらせて入院した。人...
5月12日兄の動揺、母の嘆息町屋良平は、〈身体を記す〉というテーマで書かれたエッセイ「灰色の愛」(『文學界』二〇二四年二月号)のなかで、父親の性欲について母親と話した、というエピソードに続けて、こう書いている。 ちなみにこの話を含めて母親には「私のことは小説(など)に書かないでくれ」と懇願されているが...
4月4日三つの性と死ジャック 家出をしたあなたが マルセイユの街を 泣きそうになりながら 歩いていたとき わたしが その すぐ後を 歩いていたのを 知っていましたか? 高野文子『黄色い本』 〈黄色い本〉──『チボー家の人々』全五巻を読了するにあたって実地子は、高校生活最後の日々をともに過ごした...