いまの、東京で執筆する日常、読んだり書いたりした本のこと、そして地元への思い。そういうことを書くよう求められて、私は第一回に、メアリ・ノリス『カンマの女王』を題材にして、誤字について書いた。
小説家も誤字とかするんですね! 意外! おもしろかったです!
担当の、やっぱり私と同じ高校を卒業した、中学まではサッカーをやっていたヴァイスが仲良くしていた女子サッカー部の後輩、だったという担当記者は、褒めているのかどうかよくわからない、とりあえず没ではないことはわかって安心できる内容の返事をしてくれたのだが、次は何を書くべきなのか。何を書けばあの、どんな文にも〈!〉をつけて、その健康的ないきおいで言葉に肯定のニュアンスをまとわせる一学年下の記者を感心させられるのか。いつ読んだのだったか、『フリーランスの教科書』という本のなかで、フリーランスとしてやっていくなら、時給に換算すると五千円くらいの仕事をしていく必要がある、と書かれていた。ほかの内容はだいたい忘れた今も、その一文は──小説の書き出しについてのあの言葉と同様に──頭にこびりついている。しかしそれでいくと、私は、こうして考えてる今もうとっくにコラムをやっつけ──やっつけ仕事、という意味ではなく、なんというか、ウルトラマンが怪獣を退治するみたいなニュアンスで──ていなければならないことになる、のだが、こうやってやくたいもない思考を巡らせるばかりで、コラムは一文字も書けていない。
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