top of page

2021.10.4

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年4月4日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年4月12日

昔は、現地でたまたま会って意気投合、みたいなディールが頻繁に行われていたそうだ。そういう作品にかぎって大ヒットしたりする。でも、パンデミック前にはすでに、分刻みでミーティングの予定を詰め込むようになって、そんな偶然の入り込む余地はなくなっていた。

 ここ数年、疫病のせいとはいえ世界でいろんなことのオンライン化が推し進められた。オフィスに出勤するホワイトカラーは少数派になり、企業は家賃や交通費ではなく端末購入費と通信料を補助するようになった。だからこそ、なのか、通勤の必要もないのに都心に住むことがステータスになり、私たちみたいな中くらいの稼ぎの人間は、以前よりさらに郊外に押し出された。人前に顔を出す、人と握手をするのが仕事の人以外、わざわざ遠くの街や国に出張する必要もなくなって、顔を合わせて打ち合わせをするのは、交際費でめしを食うのが主な目的だ。

 恋人の仕事も今ではほとんどネットで完結する。そして、人前に出るのが仕事の人のアテンドをする仕事、だけが最後に残った。もちろんその場で交渉がはじまることもある。派遣されるのは少数精鋭で、そのチームに恋人が選ばれたのだという。


明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

Comments


© 2020 by Ryo Mizuhara. Proudly created with WIX.COM
bottom of page