2021.10.4

昔は、現地でたまたま会って意気投合、みたいなディールが頻繁に行われていたそうだ。そういう作品にかぎって大ヒットしたりする。でも、パンデミック前にはすでに、分刻みでミーティングの予定を詰め込むようになって、そんな偶然の入り込む余地はなくなっていた。

 ここ数年、疫病のせいとはいえ世界でいろんなことのオンライン化が推し進められた。オフィスに出勤するホワイトカラーは少数派になり、企業は家賃や交通費ではなく端末購入費と通信料を補助するようになった。だからこそ、なのか、通勤の必要もないのに都心に住むことがステータスになり、私たちみたいな中くらいの稼ぎの人間は、以前よりさらに郊外に押し出された。人前に顔を出す、人と握手をするのが仕事の人以外、わざわざ遠くの街や国に出張する必要もなくなって、顔を合わせて打ち合わせをするのは、交際費でめしを食うのが主な目的だ。

 恋人の仕事も今ではほとんどネットで完結する。そして、人前に出るのが仕事の人のアテンドをする仕事、だけが最後に残った。もちろんその場で交渉がはじまることもある。派遣されるのは少数精鋭で、そのチームに恋人が選ばれたのだという。