2021.8.2

 スペイン戦の日、ミツカくんの店には、前回のメンバーに加えて、川崎から戻ってきたベラさんが集まった。常連のなかには、この店が代表戦の日だけブックバーからスポーツバーに変わることを知っている人も多く、私たち以外にも二、三人、カウンターに背中を預けてテレビを見上げる客がいた。彼らとは私たちも顔見知りだったから、試合の局面ごとに、今のは入れなきゃ、とか、この時間帯に取られるのは痛いっすね、みたいなことを言いあったりもした。

 ハーフタイムにはもう敗色濃厚で、私やミツカくんもさすがに興味を失いはじめ、テレビはほかの客が声を上げたときだけ見上げるくらいになった。それで、恋人たちがもう前半からずっとしていた、最近の仕事とか読んだ本の話に混ざった。後半も流れが変わらなさそうな感じになってきたころ、そういえばさあ、とルールーは、宇野原さんやミツカくんの酔いに、素面なりに流されるようにして愚痴りはじめた。