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2021.10.10

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年4月9日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年5月29日

 私がそんなことをしてる間も、隣の部屋で恋人は、三十分ほどの猶予の間に少しでも仕事をこなしつつ、ヤスミンとのミーティングのことで気を揉み、この時間はまだ暖かいけど日が落ちれば肌寒く、でも歩き回れば身体は火照る、という今の気候に合わせて、デニムの上に七分丈でも着りゃいいかな、くらいの私とは比べものにならないほど、服装やメイクをどうするか考えている。

 この街に越してきてもう五年が経ったが、この季節を過ごすのはまだ五度目で、毎年秋の入口に、二人は順に風邪を引く。私が図書館の仕事を雇い止めになったのはちょうど恋人の会社が完全リモートワークの体制を整えたのと同じころだった。それで私たちは、どちらも当時住んでいたマンションの契約期間内だったが、それなりの額の違約金を払って退去して、この街にやってきた。パンデミックがはじまって二年が過ぎたところだった。


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