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2021.10.3

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年4月3日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年4月6日

 袋のサイズのわりに内容量は少なく、ほんの数分で食べ終えてしまった。ふう、と満足そうに恋人がため息をつく。コンソメと甘い煙草の息だ。私たちは食器を流しに置いた。どう、捗った?と彼女が訊いてくる。それぞれの部屋にいる間、私たちはだいたい仕事をしている。休憩をとろうとLDKで会うとき、顔を合わせていなかった数時間のことを話そうにも、話題といったら仕事しかない。

 まあ微はかどり。私はだいたい微はかどりだ。みやびさんは?

 そうね、わたしも。でも、と彼女はちょっと思わせぶりに間を置く。来年はカンヌに行けるかも。

 パンデミック以降、外国との打ち合わせのほとんどがオンラインになった。配給会社にとって映画祭は大事な商談の場だ。私のような部外者は、壇上でスピーチする俳優や監督に目を奪われるが、ステージの裏では各国のエージェントが上映権の交渉をしていて、そこでは何万ドルとか、ブロックバスターものなら何百万ドルが行き交っている。


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