とにかく、集中します。五時半に駅なら、どっちにしろちょっと早上がりだし。恋人はそう言った。私たちのマンションから駅の南口までは歩いて十分ほどの距離だ。同じように家で仕事をしていても、彼女は就業規則で始業と終業の時刻が定められている。今日はヤスミンとのミーティングに合わせて始業を遅らせると言っていた。十七時すぎに家を出るには早退をしなければならない。改めて、自分の安うけあいが恨めしく思われてくる。
ほんとごめんね、勝手に。
いいって。なんかやる気出てきた。逆境に燃えるタイプですので。
頼もしい。
逆境は逆境だよ。
いやほんとすみません。
ふふ、と恋人は笑う。いつごろ出るにしよっか。
十七時、飲み物は各自持参だからファミマ寄るとして、まあ十分くらいに出ればいいかな。
よし。恋人はスマホを見下ろした。じゃあ身づくろいもしなきゃだから、集中っても三十分くらいか。
そうね。お互いもうひと息。
もうひと息。十七時ちょうどに玄関集合でいい?
玄関集合、いいね。私たちは頷きあう。それまで一時解散だ。
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