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2021.11.10

 改札から、また大勢が吐き出されてきた。二人は私の恋人を訪ねてよくこの駅で降りるからか、単に性格によるものか、いつも改札にいちばんちかい車輌に乗る。そういう車輌はだいたいどの時間も混んでいて、じわじわラッシュがはじまる今はなおさらだ。誰も並んでない乗車口を探してうろうろする私には、とても信じられない。満員から降りてもまだ押しあいへしあいしながら出てくる先頭を、見覚えのある二人が颯爽と歩いてくるのが見えた。あかん、と呟いて宇野原さんが、時計台の正面に素早く移動して、手慣れた感じでサッと敬礼した。ウノさんのああいうところが好きなんだよね、とベラさんが何の前ぶれもなくのろけ、林原さんが思わず、ええっ、とへんな声を出す。

 宇野原さんそれはちょっと犯罪級だよ! エリカが叫び、リンがくすくす笑ってスマホを掲げる。ついさっきの、ミツカくんと知らない若者と同じで、私たちはなんだかしらけてしまう。


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