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2021.11.11

 みんなごめんね、区切りまで、って思ったら熱中しちゃって。私たちは全員、何かの作品づくりをしているか、そのパートナーや幼なじみで、書く人や描く人には、友人との約束より制作を優先してしまうことがある、と身にしみて知っている。いま筆が乗ってるからドタキャンとか、捗ってないから行くわけにいかない、とかも少なくなく、そうなると、キャンセル料がかかるような場所には行きづらいし、かといって、九人がフラッと行って入れる施設はけっこう少ない。それで私たちは、みんなで集まるときはだいたい、ゾロゾロ歩き、新宿御苑とか江ノ島とかの、予約のいらない屋外で過ごす。

 ミツカくんは、まだ煙草? エリカがきょろきょろ見回して、喫煙所を見つけて目を細める。

 あと一本ってさ。

 じゃ二、三本だ。エリカの言葉に林原さんがふふっと笑い、そのやりとりが聞こえたように、透明な囲いからミツカくんが出てきた。改札から喫煙所に流れる人々に逆らうように、ときどき身体を横にしながら、二人がいるのに気づいて手を上げた。


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