2021.2.6

 それまで何を話していたのだったか、もしかしたら二人になってからずっと黙りこんでいたのかもしれないが、静かな、おたがいの足音しかしない道で、私は、ヴィッつぁんのふくらんだポケットを指さし、ゴーグルかけさせてもらえませんか、と言った。

 嫌だわ。

 ヴィッつぁんは冷ややかな声で言った。眼鏡の奥の目は、こちらを見もしない。いつものゴーグルをしておらず、トレーニングウェア姿でもないヴィッつぁんは、ほんとうに知らんひとのようだった。