2021.3.1涼 水原2021年8月29日読了時間: 1分更新日:2022年3月17日 でも、恋人の仕事が終わるのを、彼女の最寄りのドトールで本を読みながら待つことはなくなったし、玄関ののぞき穴から、レンズでゆがんだ彼女の顔を見ることもなくなった。誰かといっしょに住むのは会うことが特別ではなくなるということだ。今ではもう、彼女の顔を見るだけでうれしくなることはない。私がその顔を見ていま感じるのは生活というか日常の手触りでしかなく、それはたぶん良いことだ。2021.3.22021.2.28
明日のこと高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...
2021.12.31行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...
2021.12.30今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...
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