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2021.3.28

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2021年9月25日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年3月10日

 色の出た茶をカップに注ぐ。すこし濃く、渋みのある味になっていた。一口、二口飲み、ケトルに残っていたお湯をさし、部屋に戻った。恋人にLINEで、〈お茶いれたからご自由に、やや濃いですが〉と送ると、すぐに返事が来た。土下座するペンギンの下に、ありがと候、という手書き文字のくっついたスタンプで、これは何のアニメのキャラだったか、サムライみたいなしゃべりかたをするペンギンだ。土下座をしているから顔とか嘴なんかは見えず、ただぼてっとした紺色のかたまりにしか見えない。私は同じキャラが、かまわぬ、と尊大な腕組みをしているスタンプを返す。何年か前、映画化されたときいっしょに観に行き、はしゃいで買ったスタンプだった。恋人の会社が、海外映画専門だったのに日本映画の配給にも打って出た、けっこう意欲的な作品だったが、輸出入のライツ担当の彼女は関わっていなかったし、たしか期待ほどのヒットはせず、その後けっきょく日本映画の配給は数作でやめたんじゃなかったか。


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