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2021.5.8

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2021年11月5日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年3月12日

 私たちは江の島に向かって歩いた。私たちは湘南のこのあたりに来るのははじめてで、そのこんもりした姿とてっぺんの展望台が家に隠れると不安になって、見えるところを探してうろうろした。九人もいるのだから誰かがスマホの地図を見ることを言い出してもよさそうなものだが、私たちは愚直に、というのか、似たもの同士でかたくななのか、遠くに見え隠れする江の島を目指していくことを楽しんでいて、調べてみたら十五分も歩けば着く距離に三十分以上かけていた。いずれも三十歳をすぎた男女が九人、平日の遅い朝にぞろぞろ徘徊してるのは、きっとあまり好ましいものではなかっただろうし、私たちも歩きながら、おれたち不審者じゃんね、とか、通報されたら宇野原さんを囮にして逃げよう、イヤなんでおれやねん、そうだよこんなんでもわたしの恋人なんだから、ベラちゃんこんなんってどういうことかな、とか言いあっていた気がする。


明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

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