私たちは江の島に向かって歩いた。私たちは湘南のこのあたりに来るのははじめてで、そのこんもりした姿とてっぺんの展望台が家に隠れると不安になって、見えるところを探してうろうろした。九人もいるのだから誰かがスマホの地図を見ることを言い出してもよさそうなものだが、私たちは愚直に、というのか、似たもの同士でかたくななのか、遠くに見え隠れする江の島を目指していくことを楽しんでいて、調べてみたら十五分も歩けば着く距離に三十分以上かけていた。いずれも三十歳をすぎた男女が九人、平日の遅い朝にぞろぞろ徘徊してるのは、きっとあまり好ましいものではなかっただろうし、私たちも歩きながら、おれたち不審者じゃんね、とか、通報されたら宇野原さんを囮にして逃げよう、イヤなんでおれやねん、そうだよこんなんでもわたしの恋人なんだから、ベラちゃんこんなんってどういうことかな、とか言いあっていた気がする。
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