2021.5.9

私たち以外にも観光客らしい人通りはあり、疫病の蔓延がはじまるすこし前のことで外国人らしい姿もそれなりに見かける。周囲はどこにでもあるような住宅街なのに、観光地にちかいというだけで、人の生活の場に踏み込むことへの躊躇いを忘れてしまう。玄関先のホビットの人形、窓辺に置かれたピカチュウ、犬小屋に掲げられた名前〈ベブちゃん〉。かわいい、と声を上げて指さすとき人は、その家の中にいる人のことを忘れてしまう。私たちはそれほど大声を交わし合うような性格ではないが、それでも九人で連れ立って喋ればそれなりにうるさく、パンデミックを経た今にして思えば、きっと二度と無心で楽しむことのできないあの騒然が懐かしい。

 やがて私たちは、砂州というのか、細長い砂浜の上に敷かれた道の上に立った。