2021.6.12

 イベントのしめくくりはいつもキャプテンのスピーチだった。そのなかで彼は必ず、みなさんに、わたしのいちばん好きな言葉をお教えします、と言った。選手は男性だったが、チームに同行している通訳は女性で、私は彼の言葉を、女性の声で語られた日本語として憶えているが、実際はもちろんそうではなく、確か三十過ぎの、いまの私よりは若かった男性、彼はたしか地方都市の出身──みなさんと同じですね、と言って笑いを取るのも定番だった──で、方言の響きをまとっていたかもしれない声だった。でも、その夏からの二十数年間、たびたび振り返り続けて、私は、彼が最初から女性の声で日本語を喋っていたような気がしてきていて、それは、君島さんの座談会での様子を、彼の口から直接標準語が活字になって流れ出していたように記憶しているのと、どこか似ている。