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2021.6.12

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2021年12月10日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年3月13日

 イベントのしめくくりはいつもキャプテンのスピーチだった。そのなかで彼は必ず、みなさんに、わたしのいちばん好きな言葉をお教えします、と言った。選手は男性だったが、チームに同行している通訳は女性で、私は彼の言葉を、女性の声で語られた日本語として憶えているが、実際はもちろんそうではなく、確か三十過ぎの、いまの私よりは若かった男性、彼はたしか地方都市の出身──みなさんと同じですね、と言って笑いを取るのも定番だった──で、方言の響きをまとっていたかもしれない声だった。でも、その夏からの二十数年間、たびたび振り返り続けて、私は、彼が最初から女性の声で日本語を喋っていたような気がしてきていて、それは、君島さんの座談会での様子を、彼の口から直接標準語が活字になって流れ出していたように記憶しているのと、どこか似ている。


明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

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