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2021.6.14

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2021年12月12日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年3月13日

 キャプテンはそう、ややセンチメンタルな表情で言い、それではみなさん、わたしが今から言う言葉を繰り返してください、と求める。頷いた私たちに、彼は不意に男の声で言った。シ・セ・プエデ!

 できるんだ!という意味です、と女性の声が言い、キャプテンは、ありがとうございます、とあちこちで言ってきたのがわかるこなれた発音の日本語を口にして、手を合わせて頭を下げた。

Sí, se puede! というその言葉は、私たちのサッカー部のなかですこしだけ流行ったが、大会が終わるより早く飽き、できるんだ!の過剰にポジティブな響きも気恥ずかしくて、すぐに誰も言わなくなった。


明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

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