2021.6.15

 そのフレーズは代表チームのスローガンだったらしく、ローカルテレビや父の車のラジオで何度も紹介されていた。だから、そのときにはすでに中学生で、もしかしたらサッカーをやめていたヴィッつぁんの耳にも入ったかもしれないし、もう全力で身体を動かすこともなく、ゴーグルも度が合わなくなってから新調しなくなり、コンタクトレンズをつかいはじめたヴィッつぁんは、自分がヴィッつぁんと呼ばれていたころのことを思い出した。そしてちいさく、いっしょにテレビを観ている家族の誰にも聞こえないよう、声は出さずに口のなかで囁く。シ・セ・プエデ。