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2021.9.30

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年3月30日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年4月1日

私はキッチンに出た。コーヒーのポットが減らないまま冷えていた。バルミューダのケトルがすこし温かいのは、恋人が紅茶でも淹れたのだろうか。音楽は止まっていた。

 みやびさん。ノックをせず、届くか届かないかくらいの声で呼びかける。イヤホンをしていたり、よほど深く集中していれば気づかない声だ。返事があることとないことと、自分がどちらを望んでいるのか、呼びかけてから考えて、答えが出る前に、んー、と気の抜けた声が返ってきた。

 休憩にしませんか。

 んー?

 息抜きしたほうがいいよ。

 んー。

 もう二時間くらい集中してるし。

 んー。

 んーしか言わなくなっちゃった。さっきの、すこしギスギスした空気が、まだ残っているんだろうか。

 うん。

 コーヒーあるよ、期間限定のポテチも。

 それはわたしが買ったやつだよ。


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