本を読むのが好きな人が全員そうなのかどうかは知らないが、私たちはそれぞれの本棚を持っていて、そこに未読の本もたくさん並んでいるのに、ふだんは図書館で借りて読む。たしかこのあいだ、六日前か、彼女は年末年始の休館明けの市立図書館でハーパー・リーの何かを借りていた。洋画好きが高じて今の仕事を選んだ彼女は、しかし、仕事のスイッチ入っちゃうから、と言って、あまり映画を観ない。スタッフロールの終盤の、権利関係の部門についてのところをいつも注目してしまい、そのせいで何を見ても、あのエージェントでこのジャンルなら担当者はあの人だな、みたいな感想になっちゃう、と言っていて、それは私が、どんな小説を読んでも虚心にストーリーを楽しめず、作者の技術ばかり探ろうとし、読了後は裏表紙の価格を見て刷り部数と印税を予想しちゃうのとすこし似ている。そして私は印税計算はともかくいろんな書き手の技術を盗まないといけないし、彼女は個々の作品にあまり思い入れを抱かないほうが無心で映画を売れる。それで、彼女はだいたい翻訳の、私は国内のものを中心に、私たちは小説ばかり読んでいる。お互いの本を貸し借りすることもある。ハーパー・リーも、きっと読了したら感想を教えてくれるだろうし、彼女の話を聞けば私も読みたくなるに決まっている。そうやって私たちは際限なく積読を増やしていく。
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