2021.1.12

交際をはじめて七年、同棲しはじめてからは五年、私たちはひどく安定していて、これからの一年も、喧嘩もなく幸せに過ごす。そんな、ほとんど退屈な確信があり、その確信はきっと外れない。だからこそ、この関係を変えるのがこわい。私は一度断られたいまも、彼女と結婚したいという意思をもっている。あれ以来その話をしたことはないから、彼女がどう思っているのかはわからない。現在の結婚制度が、手放しに良いものだとはとても思えないし、前時代的な制度に乗っかることは躊躇われもするが、それでも私と彼女の、今後も延々とつづくのだろう安定した日々に、何らかのかたちで区切りを入れたい。──というのは、誰かから訊かれたときに答える用のお行儀のよい理由でしかなく、要は私は、彼女と今後もいっしょにいられるという確約がほしいのだろう。小説家なんて不安定な、水商売のようなもので、成功の保証などない。専業作家は履歴書の職歴欄には書き込めないから、仮に小説ではにっちもさっちも行かなくなって何か仕事を探しても、同世代の平均年収を稼ぐことはきっとできない。一世を風靡して一作で消えていく人も珍しくない。親しい九人のうち、私と宇野原さんと林原さんとルールー、四人いる小説家が四人とも、十年後も小説家として活動していられるかどうか。だから私生活においてだけでも約束がほしい──とまで考えて、自分が彼女の安定した生きかたに倚りかかろうとしているような気がして、考えるのをやめた。

 ベランダのドアが開く音がした。そういえば、未明に見たニュースに、十年に一度のクラスの寒波が東京上空に流れこんでいる、と書いていた。