2021.1.29

 あれは何のときだったのか、ふだんの練習ではないことは確かだし、道具一式を持っておらず、擦り傷の痛みや全身の心地よい疲労を感じてもいなかったから対外試合でもないし、ヴィッつぁんとはべつにどこかに遊びに行くような仲でもなかったし、ということはきっと、家に人を招いて手づくりパスタを、それもきまってまっ黒なイカスミスパゲッティをふるまうのが趣味の監督の家からの帰りで、たぶん私たちはイカスミの色のべったりついた歯をむいて、お歯黒!などと笑い合いながら、一人ずつ自分の家への分岐で別れていったのか、何かのはずみで二人だけで歩いていた。