2021.1.4


 このあいだ電球を替えたとき、白い光のものを間違えて買ってしまい、まだこの部屋の明るさに慣れない。まぶしさに目を細めながら、私はかるく体操をした。恋人や、下の部屋の人の迷惑にならないように、声を出さずにラジオ体操の曲を口ずさみながら、ジャンプや足踏みは省いて身体を動かす。ラジオ体操はこれでなかなかばかにできず、本気で──といっても動きを制限しているのだが──やればけっこう身体がほぐれるし、息も切れるし汗もかく。そう気づいたのは図書館をやめてすぐのことだ。最後にやったのは小学六年生の夏休みだから当時からすればほとんど二十年ぶりに、どういう気紛れか、それも眠る前か寝起きに見たスマホの、ニュースアプリかSNSに触発されたのだったか。とにかく今日みたいな早い朝、YouTubeで音源を流しながら体操をしたところ、びっくりするほど頭が冴え、一日に六十枚くらい(ふだんの五倍!)書けた、という奇跡的な一日があり、それ以来この体操を、日課というほどではないがけっこう頻繁にやっている。かったりいよな、と同級生と言いあって、ラジオ体操第二のあたりでこっそりまざってスタンプをもらっていたのが、誰にかは知らないが申し訳ない。とはいえあのころは、そんな体操なんかしなくても身体の調和がとれていたのだろう。

 身体がほぐれてきたところで、まだラジオ体操のプログラムは途中だったが、やめた。

 それから部屋を出る。私たちが住んでいるのは、たぶんよくあるタイプの3LDKで、玄関を入ると短い廊下があり、風呂とトイレ、収納のドアを過ぎると十五畳ほどのLDKがある。ほぼ正方形のLDKの、右側にキッチンがあって、そのすぐ脇が、もとは二人の寝室、いまは空室で物置になっている部屋だ。玄関から見て左側には大きな窓がふたつの本棚に挟まれており、手前が私、奥が彼女の本棚だったが、どれがどっちの本だったかはだいたいもうわからない。正面には三つドアが並び、右から私の部屋、恋人の部屋、そしてベランダのドア。ベランダには恋人の部屋かリビングからしか行けないが、私は換気をあまりしないし、彼女はどうやら二日で一箱くらい煙草を吸っているから、一日に十回はベランダに出る必要がある。部屋の中で吸えばいいのに、と非喫煙者の私は思うのだが、彼女は自分が吸っていないときに煙草のにおいを嗅ぐのは嫌らしく、だから飲食店の喫煙席(ここ十年ほどですっかり見なくなった)も嫌いだという。納豆のにおいみたいなものだろうか。

 私はコーヒーが好きで、自分が飲んでいないときにでもコーヒーのにおいを嗅いでいたい。コーヒーのにおいの香水やアロマディフューザーがあれば買うかもしれない、というのは、私のお気に入りの、まだ誰も笑ってくれたことのない冗談なのだが、とにかく私は腹をこわすくらいコーヒーを飲む。三年に一度くらい胃炎で受診し、コーヒーの飲み過ぎ、と診断されるのだがぜんぜん懲りず、病院からの帰りに喫茶店に寄ったりする。それで恋人から、一日に一リットルまで、という制限を課されていて、しかしそれではぜんぜん足りないので、こうして朝、早起きしたときにこっそり淹れて飲んでしまう。ドリッパーはすぐに洗っておく。たぶんとっくにばれている。