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2021.10.12

 三人の運送屋さんたちが手際よく養生をして、私たちの荷物をどさどさ運んでくる。うおお、と楽しげな悲鳴を上げながら、それがいちばん多い、大量に本が詰まった箱を積み重ねていく。すいません、本ばっかで。引っ越しのたびに言う言葉を私は今回も言い、いやーぼくらはこういうのがいちばんいいんスよ、と、私たちより一回りは上だろう、リーダーらしい人が快活に笑って、〈仏〉と書いた、フランス文学の本の箱をそっと床に置く。仏像が入ってると思ってるんじゃないか、というくらいの丁重さだ。それから小走りに部屋を出て行き、平凡社ライブラリーと徳間デュアル文庫が入った〈平〉を、傾けないよう大事に抱えて入ってきたときに、なんつうの、こんぐらいのほうが終わったあとのビールがうめえですからね、とつづきを言った。私たちが恐縮していると、文芸誌の〈誌〉をふたつ重ねて持った、三人のなかでいちばん若いスタッフが入ってきて、カツヤさんこれ、アラタとかギブしてたんじゃないっスか、と軽口を叩く。おまえもう堪忍してやれや、とリーダーは苦笑いして私たちに向きなおり、ほらこないだまで引っ越しシーズンだったでしょ、学生クンらが短期で入っててね、まあ力仕事慣れてないやつも毎年いますから、と困ったように笑ってみせる。私たちの引っ越しは午後二時スタートで、きっと午前中にほかの現場をこなしてきたのだろう彼らは、朝から身体を動かして高揚しているらしく、邪魔にならないように部屋の隅で小さくなってる私たちは、いまいちそのテンションについていけない。大変っスね、と私が言うと、これがぼくらの仕事っスから、とリーダーは、威嚇するように胸を叩いた。


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