そんなことを考えていたら、隣の部屋で物音がした。作業に没頭していれば気づかないくらいの音だ。私は息をひそめて耳を澄ますが、午後五時ちかい今は外の街がざわめいていて、何の気配も感じ取れない。恋人が準備をはじめたのだろう。私はけっきょくスマホをいじっていただけだ。仕事をしている間は充電器につないでいたから、まだ残り七十八パーセントあるが、家を出るまで充電すれば八十に乗るかもしれない、と思いつき、電池の劣化を早めるだけだとわかりつつまたつなぐ。
ふだんの散歩なら、クレジットカードの入ったパスケースに家の鍵を差し込むだけだ。でも今日はみんなといっしょだから、割り勘にそなえて財布を持っていく。使わないポイントカードや診察券は机の上に出してスリムにしようとするが、それでも尻ポケットに突っこむと存在感があってちょっと落ち着かない。あとはハンカチ。それで私の準備は終わり。
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