同棲をはじめて数ヶ月の間、私たちは、今は物置になっている部屋を寝室につかっていた。それぞれの旧居からもってきたシングルベッドをくっつけて、キングサイズのシーツをかけていた。そういう寝かたをしていると、ときどき、動いている間に片方のベッドがずれて、間に足が落ちたりする。私の膝が海を割るようにベッドの隙間を押しひろげ、恋人が、わっ、と無防備な声を上げる。あのときの感触をときどき思い出す。寝室を分けた今でも、どちらかの──だいたいは私の──部屋でいっしょに眠ることは、二、三週に一度くらいあるが、ああやって、ふたつのシングルベッドをくっつけることは、私たちにはもうないだろう。私たちはそういう、二人の人生最後を、きっとそのほかにもいくつも済ませている。
おまたせ! 引き戸が開いて恋人が言う。うん、と私は頷いて、水を出して泡を絞った。集合時間だ。
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