2021.10.22

息苦しいからちょっとした風邪くらいじゃマスクなんてつけなかったのに、今では唇とか鼻の下を外気に晒すほうが落ち着かない。治療薬ができてからは自費になったワクチンを、もう三年は打っていないから、今の私たちにはほとんど抗体がないはずだ。リスクと手間を天秤にかけ、その日の気分と体調を載せて、私たちは日々の行動を決める。消毒スプレーやウェットティッシュは今日は持たない。終息宣言以降は、体温計や消毒液を置かない飲食店も増えた。そういうところを忌避する用心深さは、今の私たちにはもうない。

 夕方の五時過ぎだ。大学がある以外はだいたい住宅街だから、この時間でもそれほど人通りは多くない。すれ違う人がマスクをしていなくても心が粟立たなくなったのも、経口薬が認可されてからのことだ。私がかつて働いていた図書館は大学附属で、法的な根拠はよくわからないが、大学からの指示で、マスクをしていない人の入館は禁止されていた。