二人が改札を出てくる。ひとしきり騒ぐ。ルールーとはミツカくんの店で会って以来だから一年くらいぶり、林原さんとは座談会があったから、と思い返すともう半年以上経っている。
南口に向かう。こちら側は、駅を出るより入ってくる人が多く、私たちは壁際を列になって歩く。人のざわめき、構内放送、どこかの党の街宣車の声がする。人々の身体のむこうに垣間見える駅前広場には、ロータリーと接するところにバスの停留所とタクシーの乗車位置の札が立ってる以外は中央の植え込みと時計台しかない。
あれさあ、といちばん前のルールーが振り返り、笑いを含んだ声で言ったが、その続きは、二人が乗っていた列車の発車メロディがはじまったせいで、最後尾の私にはよく聞こえない。それでも、恋人と林原さんが同時に口元に手をやったから、ルールーが何か面白いことを言ったとわかり、私も笑顔をつくった。ルールーはまた前を向き直る。そのずっと先で人が割れ、植え込みの前でこちらを向いたでかい男が敬礼してるのが見え、さっきルールーが言ったのが、やばいやついる、だったと遅れて聞きとれた。
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