2021.11.19

 二人のこと、わたしなりに心配してるんだからね。恋人のその言葉でリンの話は終わり、九人は、また二、三人ずつで縦になる。二人のこと、というのは、リンとエリカのことか、それともリンとシロタくんのことなのか。昔読んだ青春恋愛短篇漫画は、若い二人が向かいあい、好きだよ、という台詞で終わるのだが、コマは校舎の屋上から見上げた空がいっぱいに描かれていて、どちらの発言と受け取るかは読者にゆだねられていた。モノクロの青い空に放り出されたようなその感覚を、小説を書きながらときどき思い出す。小説は、装画や挿絵をのぞいてテキストだけで構成されているものだから、取捨選択の巧拙はあるにせよ、情報を落とすのがわりあい簡単にできる。私はあまりそういう書きかたをしないのだが、恋愛ものでデビューしたルールーは、人物の言動の背後にある感情を、描写することなく描くのが上手くて、私は彼女の恋愛小説を読むといつもどきどきする。

 私たちはみんなお互いの作品を読んでいるし、会ったときには、良かったよ、新境地だね、くらいの感想は言いあう。でもそれだけだ。私とルールーは作品について話したがらない。宇野原さんも素面のときは小説の話をしない。