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2021.11.20

私たち四人のうち林原さんだけが、誰かの作品が出ればミツカくんの店でその話を持ち出したり、しばらく会う機会がないときは長文のLINEを送ってくれる。先月の文芸誌に載った私の中篇も、発売されてすぐ、〈句点なしは思い切ったね! ひとすじなわじゃいかなさそう。熟読して、次会ったときに話します!〉と四冊の本を開くタコのスタンプとともに送ってくれていた。

 それでリンの話に区切りがついたあと、林原さんは私の隣にやってきて、でですね、お作拝読いたしまして、と、その文芸誌の、私たちの共通の担当である編集者が、打ち合わせの冒頭、雑談から作品の話に切り替えるときいつも口にするのを真似しながら、トートバッグからスマホを取り出した。

 メモしてきたんだ。

 私は標準より長い大学時代、ずっと文芸サークルにいて、友人の作品を講評したりされたりする機会がけっこうあった。講評、といったところで、関係性に波風立てずに合評会を終えるのが最優先で、ほとんどの部員は批判的なことを言わない。言葉の誤用や誤字を指摘するのがせいぜいだ。


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