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2021.11.21

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年5月21日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年5月22日

林原さんは、基本的に良いところを褒めるかんじで評してくれてるけど、それはあくまでも、このあとぶつける本質的な批判のまえふりだ──とあまり真に受けて浮かれないように自分に言い聞かせながら相槌を打つ。ええ、はい、いまから社に戻りますので、すみません、と電話に向かって謝りながら、スーツの男が歩道を大きくふくらんで私たちを追い越していく。駅を離れ、繁華街も過ぎて、ここからは、川崎だか横浜だかから平野を北西に走るJRの駅まで、ずっと緑か住宅だ。家に帰ってリモートで仕事をするのかもしれないな。私たちは、先頭を行くミツカくんとエリカのあとをなんとなくついて歩いている。二人がどこかを目指しているのか、何も考えずにただ足を動かしているだけなのかは知らない。南のほうに進んでいるのは、まさかやっぱりサルが見たくて、多摩動物公園に向かっているのだろうか。


明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

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