2021.11.21

林原さんは、基本的に良いところを褒めるかんじで評してくれてるけど、それはあくまでも、このあとぶつける本質的な批判のまえふりだ──とあまり真に受けて浮かれないように自分に言い聞かせながら相槌を打つ。ええ、はい、いまから社に戻りますので、すみません、と電話に向かって謝りながら、スーツの男が歩道を大きくふくらんで私たちを追い越していく。駅を離れ、繁華街も過ぎて、ここからは、川崎だか横浜だかから平野を北西に走るJRの駅まで、ずっと緑か住宅だ。家に帰ってリモートで仕事をするのかもしれないな。私たちは、先頭を行くミツカくんとエリカのあとをなんとなくついて歩いている。二人がどこかを目指しているのか、何も考えずにただ足を動かしているだけなのかは知らない。南のほうに進んでいるのは、まさかやっぱりサルが見たくて、多摩動物公園に向かっているのだろうか。