2021.11.22

 でね、ここからがちょっと気になったとこなんだけど……。リョウくん、聞いてた?

 あっ、いや、できたところより足りなかったところを意識するほうが次良いものを書けるんだよ。

 それはそれとして聞けよ!と冗談めかして怒る林原さんの向こうを、佐世保ナンバーの軽自動車が走り抜ける。

 ずいぶん遠くから来たな。

 何が?

 いま佐世保ナンバーの車がいた。

 いや聞けよ!

 見た見た、このへんじゃ珍しいよね。先頭からエリカが振り返る。彼女は九州の北の出だから、地元には佐世保ナンバーもけっこうあっただろう。

 リョウもエリーもよう見とんなあ、とミツカくんが感心したように言った。おれ外歩いててそない文字見てられへんわ。

 エリー、とミツカくんがエリカを呼ぶのを、はじめて聞いたわけではないが、ほかにそう呼ぶ人はいない。二人だけの親密な呼称──と思いついたところで林原さんが、でねリョウくん、とやや強い声音で言う。話題を戻そうとしているのを察してか、エリカたちがスッと前に向き直る。私も尻からスマホを抜いて、指摘を書き留める準備をする。いや文字見てるってかさあ、とエリカが言って、そのあとは聞いていない。