べべはさあ、とミツカくんが大きめの声を出した。ん、とうしろのほうにいたベラさんが応じる。ミツカくんとエリカがスピードを落として、私と林原さんに先頭を譲る。べべってスペニチバイリンガルで育てられたんやろ?
スポニチ?
スペニチ、スペ語と日本語。
ああ、そゆこと。英語もだよ。パパはスペイン語でママは日本だけど、知りあったときは英語だったみたい。わたしが生まれたころには三つとも、つかいわけてた。だからわたしも。ベラさんの語り口は、早口関西弁の宇野原さんと長くいっしょにいるとは思えないほどゆったりしていて、それでも情報量の詰め込みかたは、ちょっと宇野原さんに近いだろうか。好きな作家の文体に似てしまうようなことは、人間関係でもよく起きる。
なるほどね。イヤほんでね、まちなかでスペ語ってどんなけ見えるん? ミツカくんがそう尋ね、エリカが補足するように続ける。わたしらさ、英語なら多少はわかるけど、スペ仏イタリアとか、あんまりパッと見、見わけつかんのよね。
さっきまでの話から、ちょっと話題が動いている。うしろの会話から意識を話すと、林原さんもほとんど同時に気を逸らしたらしく、べべっていいよねえ、と言った。ブリジット・バルドーみたいでさ。
Commentaires