2021.11.30

ほれ、おんなじ。煙草を挟んだ指二本が、写真の上に現れて指すのを見て、ようやく何のことかわかる。電柱に打ちつけられた住所表示が、もちろん市名は違うのだが、町名が同じ〈瓦町〉だった。そう気づくと、耳元に、二年前の、思い出してる今からは二十年近く前の、幼い声の会話が、いっきに耳に蘇る。おいこれ、おまえ見いやこれ、ここおまえんちじゃね? はあ? ほらこれ。電柱やん! デンチューやん!デンチュー!デンチュー!とみんなでひとしきり騒ぎあう。で電柱が──。デデン!と誰かがまぜっかえす。ででん電柱が何だいや。だけえほら、瓦町! おおー!とみんなで拍手喝采する。当時の友人たちの顔も声も憶えているのに、思考の程度の低さがおんなじせいで、誰がどの台詞を言ったのか思い出せない。私たちは、順番にその電柱に抱きついて写真を撮り、われわれは旅先にふるさとを見いだしたのだ、日々旅にして旅を栖とす!とちょっと前まで受験生だった連中らしく芭蕉を引用してゲラゲラ笑い合った。何がそんなに面白いのか。

 戦国から江戸時代、城下町を建設するときに、領主の指示で、土木建築や武具馬具なんかの組合に土地を割り当て、職人たちを集住させたのだという。その名残で、いまも各地の城下町に、材木町とか大工町とか桶屋町がある。仲間の一人の住所が瓦町で、私たちは、たいして珍しくもないその町名を旅先で見つけてはしゃいだのだった。