2021.12.1

 なんかみんな引っ越してって暇だったけえな、街ブラ。けっこう楽しかったで。

 おれらおらんのが寂しゅうてそんなんしてたんか、きみってええやつやね。当時交際していた、神戸出身の人の訛りに染まった言いかたをすると、冗談を言ってると思ったのか、くすぐったそうに短く、うひゃ、と笑った。

 私の地元の城は山城で、街中ではだいたいどこからでも、てっぺんの天守閣跡だけへこんだ山容が見えた。エリカの街のは平城だ。街には防衛線を兼ねているのか水路が張りめぐらされていて、そこここにちいさなお社があり、私たちが騒ぎながら歩いてる横で、地元の人たちは、通り過ぎるときに一礼したり、手を合わせたりしていた。水神さん、と親しげに呼ぶエリカもそのひとりだったのだろう。私たちは同学年だから、あの街で、高校を卒業したばかりの二人がすれ違っていたかもしれない。すれ違ってたからどうってことでもないか。

 東京も古い城下町で、都心あたりには鍛治町とか簞笥町とか紺屋町とか、職人町の名残らしい町名がいくつもあったが、都下もここまでくれば、そういう土地はあまりない。このへんでは多摩川以外に川がないし、水路も道路の側溝みたいのしか見かけないが、それだって道祖神と同様に、町の発展とともに埋め立てられたり暗渠化したりしたのだろう。

 人は故郷の話になると饒舌になるもので、エリカと夢中で話しながら歩いていると、時間が経つのを忘れていた。不意にうしろから、みんなちょっといいかな、と恋人の声がして我に返る。立ち止まって振り向くと、八人の視線を集めている恋人が、ちらりと私に一瞥をくれる。すこし気が立ってるときの目だ。ミーティング!と口をついて出た。スマホを出して見下ろすと、もう六時十五分じゃないか。