2021.11.5

 どういうことってもな。ミツカくんはマスク越しに鼻の頭を掻く。ほらおれ店やってるやん、Facebookで常連さんとかの誕生日やら記念日やら、とにかくなんや口実あればメッセージ送っとんねやんか、言うたら悪いけど営業みたいなもん、そんだけ。

 ここまで列車に揺られながら準備してきた跡の残る、よどみない口調だ。たいした根拠があるわけでもないが、なんとなく嘘くさい。でもマリアいまサンディエゴだよ、とベラさんも疑わしげな口調だ。

 べつに遠いからってお客の価値は変わらんやろ、とミツカくんは妙にかっこいいことを言い、それよりサルよサル懐かしい、おれサル見たいわ、とはぐらかすように早口になった。リョウくんこのへんサルおらんのん。

 野生の?

 んなわけあるかい。ミツカくんのつっこみは鋭い。え、それともおるのん、野生の。

 おらんよ。

 おらんのんかい。

 挨拶をするタイミングをみんな逃して、だらだらと話しつづけていると、私の尻でスマホが震えた。みんなもそれぞれのポケットや鞄からスマホを取り出す。エリカが、あとふたえき!と送ってきている。二路線が交わるターミナルで、二人はそこで南からの列車を降りて乗り換える。そのメッセージを見たあと、みんなそれぞれSNSとかニュースアプリとかを開いて一転黙った。この感じも江ノ島以来だな。