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2021.11.5

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年5月5日
  • 読了時間: 2分

更新日:2022年6月5日

 どういうことってもな。ミツカくんはマスク越しに鼻の頭を掻く。ほらおれ店やってるやん、Facebookで常連さんとかの誕生日やら記念日やら、とにかくなんや口実あればメッセージ送っとんねやんか、言うたら悪いけど営業みたいなもん、内容も、ハッピーバースデー!センキュー!の一往復で終いやし。そんだけ。

 ここまで列車に揺られながら準備してきた跡の残る、よどみない口調だ。たいした根拠があるわけでもないが、なんとなく嘘くさい。でもマリアいまサンディエゴだよ、とベラさんも疑わしげな口調だ。

 べつに遠いからってお客の価値は変わらんやろ、とミツカくんは妙にかっこいいことを言い、それよりサルよサル懐かしい、おれサル見たいわ、とはぐらかすように早口になった。リョウくんこのへんサルおらんのん。

 野生の?

 んなわけあるかい。ミツカくんのつっこみは鋭い。え、それともおるのん、野生の。

 おらんよ。

 おらんのんかい。

 挨拶をするタイミングをみんな逃して、だらだらと話しつづけていると、私の尻でスマホが震えた。みんなもそれぞれのポケットや鞄からスマホを取り出す。エリカが、あとふたえき!と送ってきている。二路線が交わるターミナルで、二人はそこで南からの列車を降りて乗り換える。そのメッセージを見たあと、みんなそれぞれSNSとかニュースアプリとかを開いて一転黙った。この感じも江ノ島以来だな。



明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

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