2021.12.16

いやミツカくんもどうだろう、話すなら萩尾望都のほうが盛り上がるだろうか、と、こうやって延々頭のなかで捏ねまわした冗談はだいたい受けない。

 See you again. Yes, see you soon. At Tokyo? 恋人とヤスミンが手を振りあって笑う。もう片方の手を伸ばし、PCのタッチパッドで指をすべらせて、通信を切断する効果音のあと、ようやく笑顔をひっこめた。ふう。

 終わった? 僧侶の妻が言い、湯気の立つお茶を渡す。おつかれさま。

 はい、すみませんでした。ありがとうございます。受け取って頭を下げ、ひとくち飲む。あったかい。

 なんとかなってよかったね。

 ほんと、お二人のおかげです。あっ、そうだ、と腰掛石に湯飲みを置いて、リュックから名刺入れを取り出した。普段の散歩なら名刺なんて持ち歩かないだろうし、今日は、ミーティングをするから半分仕事ということか、それとも荷造りのときに入れっぱなしになってたのだろうか。

 ああ、それはわたしより、と彼女は夫のほうを見る。ん、ああこれはどうも。リョウシュンさんも湯飲みを置いて両手で受け取る。すみませんね、わたしの名刺、本堂だ。

 お坊さんも名刺つくるんですね。ルールーが脇から言う。

 檀家さんだけがお相手だったら必要ないんだけどね。人と会う仕事ではあるし、地位のある人だと名刺交換しないと落ち着かん!って人もいるから、いちおう準備してます。

 でも、リョウシュンから聞いてびっくりした。映画の上映権?のやりとりするお仕事なんですね。

 エンドロールだと日本側のスタッフは翻訳者しか出ないですもんね。でもポスターとかパンフにはあるんですよ。ちーいさい字ですけど。

 お、じゃあ見てみようかな。リョウシュンさんが恋人の名刺を妻に見せ、会社名を読み上げる。私も交際をはじめて最初のころは、恋人の会社が関わった映画のパンフレットを必ず買って、社名を確認して喜んでいたものだが、パンデミック以降は映画館に行くことも激減したし、さすがに今では慣れてしまって、ポスターの端っこやパンフレットの最終ページの十数文字程度でははしゃげない。