2021.2.14

 ヴィッつぁんのことを、私がそのゴーグルをかけさせてもらえなかったことを、すべて削れば千字におさまりはするのだが、その文章はヴィッつぁんなしには導き出されえなかったもので、ほんとうに前段を──五千字あまりを削っても成り立つものなのか。私はほんとうは、視界とか解像度とか小説のことなんかじゃなく、ヴィッつぁんの話がしたかったのではないか。

 ヴィッつぁんを見るといつもダーヴィッツを思い出した。卒業以来ヴィッつぁんに会うことはなくなり、ダーヴィッツはあいかわらずユヴェントスとオランダ代表のレジェンド──オランダ代表歴代ベストイレブン、トレッドヘアベストイレブン、動物の愛称で呼ばれたベストイレブン──でありつづけ、だから引退後もダーヴィッツの写真や映像を目にする機会は頻繁にあり、しかしダーヴィッツを見てヴィッつぁんを思い出すことは少ない。