2021.2.8

 ヴィッつぁんの視界は、どんなだったのだろう。水泳の授業でゴーグルをつけたことくらいはあるが、その状態でボールを追って校庭を走り、人と身体をぶつけあったことは一度もない。ゴーグルにかくれて真横からはヴィッつぁんの目が見えなかった、ということは、ヴィッつぁんは真横から飛んでくるボールや、スライディングをしかけてくる相手、パスを送るべき仲間──タッチライン沿いを駆け上がる私──が見えなかった。そんな制限された視界でもサッカーはできる、ということは、ほかならぬダーヴィッツが証明していることではある。でも、緑内障を発症したときすでにトップレベルの選手だった彼とちがい、ヴィッつぁんはまだ小学生だった。サッカーをはじめてから視力の低さが判明したのだとしても、プレーをやめることはかんたんだっただろうに、ゴーグルをつけることを選んだのだ。どんな覚悟だったのだろう。きっと彼が見ていたものは、気まぐれにゴーグルをつけてサッカーをしてみたところで、私には見えない。