昨日届いた原稿を読みはじめる。私はどうやって小説を書いてきたか、というテーマの座談会で、私と宇野原さん、宇野原会の久保野くんと下戸組の林原さん、最近デビューしたばかりで、宇野原会の誘いをかたくなに断りつづけている君島さんの五人の座組だった。全員三十代で、以前から面識もある人がほとんど(林原さんと君島さんだけは初対面)で、緊張がおなかにくる私も気楽にしゃべれた。それにしても文芸誌編集者の埜田さん──私と君島さんの担当──がそういう五人をキャスティングしたということは、私たちの会話が内輪のノリに終始するのは予想できたはずで、たぶんその、お互いに構えず、ざっくばらんに話させる、というのが彼の企図だったのだろう。私のように大学生のころデビューし、多重留年のすえに大学院まで行って、そのあともアルバイト以外の労働をしたことがないまま専業になった者もいれば、宇野原さんのように中上に憧れて高卒で肉体労働をしていた者もいる。久保野くんはもともと劇作家で、林原さんは女子大を出たあと五年ほどタウン誌の編集をやっていた。いま兼業作家をしているのは君島さんだけで、彼は中学校の陸上部の顧問をしていて、あの日もアディダスのジャージ姿にウインドブレーカーで現れたのだった。着替えてくればいいのにそんな恰好のまま来たのは、最年長とはいえデビュー数ヶ月しか経っておらず、まわりにいるのは先輩ばかりで、彼なりの武装だったのだろうか、と、メールに添付された集合写真の、神経質に引きつった笑顔を見て思う。
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