2021.3.17

しかし世評がいちばん高いのも君島さんで、宇野原さんなんかは、ミツカくんの店で酒に酔っては彼の話をしている。

 キミちゃん(宇野原さんはミツカくんの店で酔ったときだけそう呼ぶ)はさあ、私性があんねんな、強度や強度、郷土の強度や。湯布院の湯煙吸うて育って大体大で四年間チャリこいでユニバーシアード出て今は福生の古文教師でバツイチ子持ちの無頼派作家やろ、要素多いねん要素が。どこをどう切り取っても物語があるやん。そらぼくかてね、いろいろあったけどね、高校出てフラフラ土方やって十年経ってデビューした、以上!っちゅうてな、こんなんじゃせいぜい中篇ひとつやわ、強度がない。太刀打ちできひん。

 ミツカくんは苦笑いしながらも、高卒でバーテンやっとるおれも強度ないんか、と燃料を投下する。

 おまえは小説書かへんやろ。おれが書け書け言うても書けへん。

 ホンマに書いてほしゅうて言うてへんやろ。

 そらそうや、ミツが本気で書いたらおれなんて立つ瀬なしやもん。

 せやろ。せやからおれは小説はぜんぶおまえに任せとんねん。

 へへへへへ、と二人は笑いあってグラスをぶつける。