2021.5.28

 その言葉を、私は座談会の場で直接耳にしたのだが、原稿とゲラと最終確認のPDFと実際の誌面で、その都度誰かの手が入って整理されていく文章をくりかえし読んだからか、実際に君島さんが口にした言葉と構成を経たテキストがない交ぜになって、彼が大分弁の抜け落ちた声で喋っていたような、私たちが彼の言葉を目で読むテキストとして聞いていたというか、より正確に表現するなら、実際に起きたこととはかけ離れた、彼の口から直接活字が刷り出されていったような、というべきか。

 デビューしてから十年以上、学生やフリーターとの兼業で書きつづけた私は、彼の発言に心を打たれつつ、何かのバランスを取ろうとして、でも君島さん、そんなに気負わなくてもいいんじゃないですか、と言ったのだが、それは最初の原稿の段階で消されていた。