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2021.6.25

 私の両親も読書が好きで、出会ったのはたしか大学のテニスサークルだったがアガサ・クリスティが縁でほかの誰より親しくなって結婚までしたとかで、私がふだん作品を発表しているような文芸誌はほとんど読まない。本棚には赤いハヤカワ文庫のクリスティほかいろいろ推理小説があり、帰省のたびに本が入れ替わっていて、私は毎回、荷物を置いてひと息ついたら二、三十分はその前で過ごす。恋人も、ふだんミステリはぜんぜん読まないのに、このときだけは興味深そうにぱらぱらやっている。雑誌は父が定期購読している文藝春秋とか中央公論とかの総合誌とミステリ・マガジンと小説推理、隔月刊の猫びよりと、そして私の原稿が載った文芸誌がごちゃごちゃに入っていて、母が言っていた、私の最新作が載った号も猫びよりと岩合光昭の写真集の間に挟まっていた。カオルくんの、あるね。恋人が囁いて指さす。


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