2021.7.13

 自分より十歳くらい上の男女が、片方の故郷を泊まりがけで訪れているのを見た大学生が、二人を夫婦と思うのは、それはまあそうだろう。夫婦じゃないんだよ、と口をついて出そうになり、しかし考えてみると、私たちが気まぐれを起こしてこんな滝まで来なければ二人との間に接点などなく、今後関係がつづく見込みもない、連絡先を交換するような雰囲気にもなっていないのに、私たちについての情報の正確さを期することもない。考えるのが面倒になり、彼女に任せるか、と思って隣をちらりと見ると、恋人も同じような目でこちらを見ていて、お互いの魂胆を見抜いた顔で私たちは笑った。湯豆腐の汗が浮いた額をおしぼりで拭いながらティエンがなにか、また真顔で冗談とも本気ともつかない言葉を返す。真面目っぽいしゃべり方をするけれど、それはネイティヴではない言語をつかっているからで、ほんとうはけっこうひょうきんな性格なのかもしれなかった。