2021.7.16

行きを走っているときはわからなかったが、私たちが走った道はずっとわずかに傾斜していた。帰路になってようやく、車輪が回りやすいことに気づいた。楽だね、と言い合いながら、私たちは口数少なく自転車を走らせた。

 お互いが似たようなことを考えていて、どちらかが切り出すのを待っていた。私たちはもう二年ほど交際していて、行った先で夫婦に間違えられることは珍しくなかった。いつもならその場で訂正したり冗談にまぎらせたりして軽く終わるはずが、その機を逸したせいで、帰路にまで持ち越してしまった。彼女が何を考えていたのかはわからないが、私はたしか、そこでさっきの話を持ち出すと、その話の流れで、じゃあほんとうに夫婦になる?みたいな、ぜんぜん良くないプロポーズをやりかねなくて躊躇っていた。そしてそのときは、彼女の沈黙を、私からそういう話を切り出すのを待っているのだ、と思い込んでもいた。