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2021.7.6

  • 執筆者の写真: 涼 水原
    涼 水原
  • 2022年1月3日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年3月13日

冬になるとこのあたりは雪深く、私たちが立っているアスファルトも、春に溶けるまでずっと冷たい底になる。滝から跳ねたしぶきが、流路のわきの草花を凍りつかせる。滝は、いくつものちいさなつららに縁取られ、轟音も雪に吸収されて、あたりはひどく静かになる──。まあぼくはここ来たことないから、ぜんぶ映像で観ただけなんですが。

 そう。恋人は音に耳を済ませて遠い目をする。想像しているのかもしれない。わたしの地元にもあったな、たしか。日本の滝百選。

 ビデオ見せられた?

 あったあった。〈総合〉の時間ね。

 わがまちの誇る名瀑布。私はビデオのナレーションを真似て言う。

 古くより山岳信仰の聖地として崇められ、人々の暮らしを見守ってきました。彼女も楽しそうにあとを継ぐ。


明日のこと

高台にキャンパスがあり、坂を下ったところに附属の小中学校があった。私はそこで九年間を過ごした。私が小学校に入学したときは教育学部附属だったが、通ううちに教育地域科学部になり、卒業するときは地域学部になっていた。とはいえ、入学式を終えたばかりの児童にその違いはよくわからない。...

 
 
 
2021.12.31

行ったねえ。恋人が、みんなといるときよりゆったりした口調で言った。 行ったねえ。私も同じように返す。どちらからともなく手をつなぎ、北口から駅を出た。南口側ほど栄えてはいないが、こちらも駅を出てすぐは飲食店街だ。といっても、大晦日にもなるとチェーン店の多い南側と違い、北側はも...

 
 
 
2021.12.30

今年ぃ?とミツカくんが怪しむ。そうだったの?と今年ずっといっしょにいた恋人が目を見開く。あ、いや今日、今日考えてた、と慌てて訂正した。 今日ずっとでもたいがいやわ、とミツカくんが笑う。 まあでも今年ずっとよりはマシやろ。...

 
 
 

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