top of page

2021.8.13

 ゲラを上書き保存して編集者に送る。ひと息ついて立ち上がり、部屋を出る。昼過ぎのLDKの窓は西に向いていて、この時間がいちばん明るい。私がゲラに集中している間に恋人が紅茶を淹れたらしく、部屋には残り香が漂っていた。彼女は私と違って紅茶が好きで、なんとかという品種ばかり飲んでいるらしいが、なんという品種だったか何回聞いても憶えられない。いい匂いだ。

 私も湯を沸かし、紅茶を淹れて自室に戻る。ブルックスのティーバッグは個包装で、さっき捨てた袋にちゃんと品種名が書いてあったはずなのだが、部屋に入って机にカップを置くころにはもう忘れている。


bottom of page