カオルくん窓開けてる?
暑いから。私はあまりエアコンでつくった空気が好きではなく、暑さ寒さには服装と窓で対処する。対して恋人は換気以外では窓を開けず、冷暖房はもちろんのこと、除湿も加湿もできるしアロマとかもついてる空気清浄機を使っている。私たちは快適と感じる空気のありようが違っていて、そのことも、二人が寝室を分けるにいたった、いくつものちいさな積み重ねのひとつかもしれない。
閉めてくるね、と言って、マグを持って自室に入る。コースターに置いたところで、ちょうど横で充電していたスマホが震えて灯り、〈えりかさんがスタンプを送信しました〉と表示された。
窓に歩み寄る。網戸を開けて、外側の窓に手をかけたところでふと、ここでちょっと──ほんの数十センチ身を乗り出せば子供たちを見下ろせる、と思いつき、それと同時に今朝まだ暗い時間、覚醒する前の頭で考えた、いまから振り返れば夢のなかのできごとのように遠のいた思考が思い出されてくる。
──子供たちは、ほんとうに存在しているのだろうか?
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