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2021.8.28

 開けっぱなした向こうから、隣室のドアを閉める音の余韻が消えるまで、私は何をするでもなく、新しいサルやメッセージが現れつづけるスマホの画面を見下ろしている。粟立った感情が落ち着くころには、恋人はたぶんもう仕事を再開していたし、彼女と私の会話を知るはずもないみんなは、ミツカくんが口移しでサルに餌をやろうとして鼻面をひっかかれた話をしている。その様子を見ていたのは宇野原さんとベラさんと私と、ベラさんの友人の何とかという人で、その何とかという人は、たしかベラさんの父親の郷里から旅行で来たはずだ。彼女が話す言葉をわかるのはベラさんだけだった。ミツカくんの鼻は、血こそ出なかったが、しばらくすると赤く膨れ、それを見ながらベラさんの友人がスペイン語で何か言って、ベラさんはそれを、赤ちゃんみたいでかわいい、と訳してくれたのだが、三十近い酔っぱらいが鼻にみみず腫れをつくって赤らんだ顔でヘラヘラしてるのを、私たちはぜんぜんかわいいとは思えず、たぶん彼女と打ちとけたくて身体を張ったのだろうミツカくんも、なんか恥ずかしそうにはにかんでいた。



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