都合三度の留年の間に同期入学の連中とはほとんど疎遠になり、文芸サークルの仲間はだいたいそれぞれの郷里や東京で働いている。暇な平日の午後をいっしょに過ごす心当たりは数えるほどもおらず、私のメールに唯一返事をくれたのが、あの先輩兼同級生で、彼は何をどうやったのか私の一年あとに卒業しおおせ、どんなコネを使ったのか今ではこの大学の職員になっていて、だからメインストリートの北の端、教養棟ちかくの学食で会おう、と書いて寄越してきた。きっとほんとうはまだ留年し続けていて、でもそんなに長く学部生をやっているなんてふつうじゃあり得ないことだから、本人も周りの人たちも勘違いしてるんだろう。
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