のちに私は小説家としてデビューし、どうにかこうにか大学を卒業して、東京に移って三年過ぎてから、ようやく最初の本が出た。本が出るまで戻りません、と啖呵を切って上京してきた私は意気揚々といそいそと北行きの飛行機に乗り込み、当初の見込みより時間がかかったのでやや背中を丸めて降りた。ブームから五、六年が過ぎていて、もちろん跳ねてるやつなんていない。かつてのバイト先に顔を出し、いくつかの書店にも挨拶をして、私は大学の生協に向かった。編集者がアポを取っておいてくれた書籍コーナーの担当者と話す。彼女はブーム当時ここの学生で、跳ね歩き用に買ったバッシュ(めちゃくちゃ高くジャンプするバスケやバレー用の靴は、同様に膝や足裏に負荷のかかる跳ね歩きに最適だった)を、今も履いて働いている。サイン用のペンや落款、POPなんかも持ってきたのだがすべて断られ、私はとぼとぼとメインストリートを歩いた。
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